アール・ブリュット ―日本人と自然― in 九州 ギャラリートーク

配信日時:
2020.9.17
出演:
キュレーター 真武真喜子(またけ まきこ)
会場:
長崎県美術館 県民ギャラリー
  • オンデマンド配信

2020年9月17日に開催されたギャラリートークの様子をお届けします。

※こちらの動画は音声が聞き取りにくいところがあります。
字幕が読めない、読みづらい方は、以下のテキストの読み上げ機能をご利用いただき、本編と併せてご覧ください。

九州ギャラリートーク

テロップ
日本博、文化庁、令和2年度日本博主催・共催型プロジェクト

日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバル in九州ブロック

アール・ブリュット-日本人と自然-in九州

キュレーターによるギャラリートーク
語り 真武真喜子(またけ まきこ)さん
2020年9月17日

《広い展示室。帽子に緑色のボブヘア、メガネをかけた真武さん。白いシャツにポシェットを斜めがけ。マスクをしている。襟元にピンマイク。》

真武さん
始めに、この展覧会の全体のことを少しお話しします。
「アール・ブリュット-日本人と自然-in 九州」 という展覧会なんですけれども
同じような展覧会が 全国で2020年度は5つの会場で開かれます。
でも地域がそれぞれ違うので、この“in 九州”は
九州の作家さんたちを中心に選んでいます。
全部で 34名の作家さんがいるんですけれども
そのうち8名が 実は、滋賀県で開かれた全国の作家さんを集めた展覧会
その中から8名が来ています。
ですから 34名から8名を除いた26名が九州の作家さんです。
この展覧会で いろいろと集まって、選ばれた作品です。
その34名による展覧会をここでは4つのテーマで4つの会場に分けています。
会場ごとに行きますので、まずは このAの会場から。

Aの会場は日常性というのをテーマにしていて
身近な生活とか 身の回りのいろんなことを描いた作品が集められています。
Aのコーナーで まずは犬塚弘(いぬづか ひろし)さん。長崎県のかたです。

《白い壁に額縁に入った絵画が展示されている。ほぼ同じ大きさの絵が等間隔に横一列に8枚ほど並んでいる。酒瓶の絵。》

真武さん
ご覧いただいたら分かるんですけれども
全部お酒の瓶です、描かれているのは。
お酒の瓶が絵の真ん中にボンとあって
その周りにいろんな字が書かれています。
この字は、このお酒の瓶の中にラベルが描かれているんですよね。
普通によくある お酒の瓶のラベルに
いろんなことが書いてあります。
そのラベルの中に書いてある文字が全部 周りに書かれているんですね。
それで なんていうのかな、お酒の値段とか
それから お酒も日本酒とか焼酎とかいろいろあるので そういう種類とか
お米で出来てるとか何で出来てるとか、そういうこととか。
それから お酒を造った会社の住所とか連絡先まで書いています。それと値段ですね。
なんか お酒の宣伝みたいなんですけども
これは宣伝を目的としたものではなくて
犬塚さん本人が お酒の瓶が大好き。
お酒が好きなんじゃ… お酒も好きかもしれないけど
お酒の瓶を見るのが好きで、それも特にラベルを集めるのが好きで
ずっとラベルを集めては、その瓶をそっくりに描いてるんですね。
でも写真に撮ったものじゃなくて
自分で値段とか主成分とか、そういうのを書いているので
そういうものじゃなくて本当に面白いです。
犬塚さんは小さい時からお酒の瓶を見るのが好きだったそうです。
それで その頃 描いた絵の中にもお酒の瓶をもともと描いていたそうです。
じゃ 次 行きます。

《真武さんが歩いて移動する。》
《同じ部屋の別の壁に俵を引くまつりの絵。魚をくわえた猫の絵。星空を飛ぶペガサスの絵。真武さんが壁の真ん中辺りにあるペガサスの絵の前で立ち止まる。》

真武さん
これは熊本の荒木聖憲(あらき みのり)さんという方の作品なんですが
遠くから見ると絵に描いたもののようですけれども
近寄って見ていただきたいんですね これは。
色紙(いろがみ)を小さく小さく ちぎってそれを貼り合わせたものです。
それで その色紙もいろんな大きさに切っています。
ひとつの空の背景を見ても、青い所と小さな破片
全然 青じゃない破片を入れたりとか
地面もグレーの色紙ですけど
中にいろんな色を入れて、すごく影とかを表現したりして。
荒木さんが全部、市販の色紙を手で ちぎって
それを小さなかけらに糊を貼って、それで どんどん作っていくんですね。
で ここにあるのは、港の漁師さんがお魚を揚げてるところに猫が来て
それを盗っていっている、というふうな画面ですけれども。
そんなふうに自分の身の回りの風景を描いたり
そうかと思えば このように神話の世界
ペガサスですけれども
そういう神話の物語とか、それから空想の物語とか
図形のようなものも作ったり
それから大きな画面になると、1年半かかるそうです。
これぐらいだと2~3か月かかる
もっと大きな画面だと、1年半かけて作るそうです。

《真武さんが反時計回りに部屋を歩いていく。》

真武さん
これは福岡県在住の田中康弘(たなか やすひろ)さんの作品です。
田中さんは淡い色彩で色鉛筆を塗っていろんなものを描いてます。
たいてい身の回りの世界を描いてます。

《真武さんが黄緑色の建物の絵を指し示す。》

真武さん
で… これは お家がありますけれども
お家の前に男の人と犬が立っていて
タイトルは 「やかましい犬どころ」。
やかましい犬がワンワン吠ほえて
うるさい犬がいる所という意味なんですけども
でも お家だけじゃなくて その周りに
お庭で植木に水をやっている人がいたり
それから もう1匹 犬がいたり
それから お隣にアパートがあって
その窓に洗濯物が干してあったり
それから一番上の階では お布団を干している人がいたりして
そして家のアンテナとか、アンテナにカラスが止まってる。
すごく小さな世界が画面いっぱいに描かれています。
そんなふうに近所の駅のホームに立っている人。

《真武さんが赤い電車が停車したホームの絵を指し示す。隣に並んでいる絵について説明していく。》

真武さん
それから たぶん施設で行われたクリスマスの音楽会とか
それから公園で集まっている。
そんなふうにすごく身近な風景が描かれてるんですけども。
中には えー 突然ですけど、エジプトのラクダがいたり
それから猿が温泉に入っていたりとか
そういうテレビで見たのかなっていうような風景も描いています。

《Bコーナー。マスクを外した真武さん。》

真武さん
“線と色彩 跳び立つかたち”といって 主に
あまり意味がないように見える線とか色彩がいっぱい詰まっている。
そういう絵を集めています。

《真武さんが台の上に置かれたいくつかのアクリルの箱を指し示す。中に 糸の集まりのように見えるカラフルな紙切れ。》

真武さん
ここにあるのは絵じゃないんですけれども
実は全部 紙切れを切ったものなんですけども
これは熊本の藤岡祐機(ふじおか ゆうき)さんの作品で
ひとつずつの紙切れを見ると すごいです。
刻みが入っていますが、細い細い線に刻まれています。
それは どうやって出来たのか
見ただけでは分からないんですけれども
実は藤岡 祐機さんがいつも いつもハサミを持っていて
ハサミで切った紙切れなんですね。
それが本当に いろんな大きさに刻まれています。
真っ白いのが集められていたり、ちょっと大きめに切ったりとか
それから きれいに線がそろっているものとか
いろんな、そんなふうに アクリルの箱に入れて展示しています。
この箱は祐機さんが切った紙切れが
実は印刷物を切ったものなので表と裏があったりして
それを紙に自分で クレヨンで色を付けたものもあったりして
裏表が見えたほうがいいので
底が鏡になったボックスを作って、その上に並べています。

この展覧会では見られませんけど
いつも どこに出かけていく時もハサミを持っていってるかたなので
展覧会になったら 自分でハサミで切って
作品を作っているところを皆さんに見ていただくこともあるようです。

《壁を挟んでBコーナーが続く。真武さんが歩いていき、10枚ほど絵が展示された壁の前で立ち止まる。》

《白い紙に左端を黒で塗りつぶしたような絵。ほかに下の部分を塗りつぶしたような絵も展示されている。》

真武さん
こちらは沖縄県の喜舎場盛也(きしゃば もりや)さん。
喜舎場さんも小さい形をたくさん集めてるそうです。
この左側の4点は 実はここから見ると
黒い形が現れるみたいですけれども、ひとつひとつが漢字です。
ずーっとレンガを積むみたいに漢字を積み上げているんですね。
この4点は漢字で出来てるんですけれども
これ全部 埋まっている作品も中にはあるんですけれども
これは途中で やめています。
どこから描き始めたのか どこで終わるのかというのが全然 決まりがなくて
喜舎場さんが好きな時に 好きな形が出来たらやめるというふうにして
描き方も ずーっと下から こう 横に繋げるようにしてあるんですけども
もう全部 横まで行くのと、ここで やめて上に行くのと
いろんな描き方があるんですね。
これが一番最初なんですけれども。

《左端から4分の1ほど、黒い油性ペンで描かれた漢字で埋め尽くされている。》

真武さん
最近では この漢字がカラフルになって、色の斑点になって
斑点で全部 埋めていくという作品になりました。
描くたびに その斑点がすごく大きくなって、ベルの形になるっていうのもあります。

《小さなカラフルな斑点がびっしり詰まった絵や大きな斑点の絵。カラフルなベルで埋め尽くされた絵もある。》

《真武さんが横へ移動する。キャンバスいっぱいに 水彩絵の具のしぶきがかかったような淡い色の絵が並んでいる。》

真武さん
こちらは大分県の後藤 春枝(ごとう はるえ)さん。
この後藤さんの作品も小さいものが たくさん集められています。
遠くから見ると なんかこう見え方が抽象絵画みたいですけれども
近寄って見たら 実はひとつずつ小さな小さなお花の粒が
全面に集められているんですね。
お花がずっと いろんな方向を向いて 積み上げられているので
遠くから見ると動きがあって
三角形とか丸とかに繋がっているんですけれども
後藤さんのお話では、これは全部 お花や植物であって
三角形とか丸とか そういうのも
葉っぱとか花びらとか そういうものを描いているそうなんです。
最初 小さな紙にお花をいっぱい描いているところを
施設の職員さんが見つけて、もっと大きな紙に描いたらどうかって言われて
それで こういうふうに描き始めたんですけども
最初は どんな小さな紙でも全部 埋めていくんですね。
大きな紙でも同じように埋めていくんです。
あとは塗り絵帳も塗り絵をするんじゃなくて、塗り絵帳の中にある絵は無視して
その場に全部 この小さな形で埋めていっています。
塗り絵帳もあれば、一番端っこにある左側のはノートブックに描いていますけど
ノートの1枚1枚 全部 お花で埋まっています。
すごくかわいらしい形なんですけれども。

《別の部屋。》

真武さん
Cのテーマのお部屋になりますね。
Cは“いのち エネルギー 噴出”といって
動物とか人間とか そういうエネルギッシュなもの いのちのあるもの
エネルギッシュなものの作品を集めています。
全体にエネルギッシュなんですけど
特に この動物とか生き物を描いています。

《紙を何枚も繋げた絵。カラフルな動物たちが同じ方向を向いている。》

真武さん
最初に出てくるのは坂口倫太朗(さかぐち りんたろう)さんの
「動物の大行進」 なんですけども
こう見て 奥を見たら
皆さん びっくりされると思うんですけども
坂口さん 2点 出していて、これは3段組みの動物の行進。
で あちらを見ると、あとで あちらに行きますけども
なんと 15メートルの長さの動物の大行進
全部A4の紙を繋いで描いてるんですね。
こちらはA4の紙を繋いだものを3段に組んでいます。

《A4用紙を繋げて、縦60センチ、横3メートルほどの絵。》

《真武さんが移動する。広い部屋に斜めに渡された15メートルの絵。》

真武さん
こう ここまで来ると本当に圧巻ですけども
これは さっき3段組みだったのが、1段組みを ずっと横に繋いでずーっと向こうまで。
これは さっき15メートルと言ったんですけども
15メートルの作品を展示する台がないし
壁に15メートル貼ってしまうのでも
1人だけで15メートル 取ったら ほかの人の作品が上がらなくなるので
どうしましょうって皆さん考えて
こういうふうに上に吊るアイデアを出していただいて上から吊るしています。
3メートルの作品も、それから この15メートルの作品も
同じように動物が右から左にずっと行進しています。
いろんな動物のほとんど いろんな種類の動物がいます。
中には色を塗っていない所もありますけれども
こういうところがわけは分かりませんけれどもすごく面白く出来ています。

《いろんな色の牛や馬、鹿、ヤギなどの動物が皆、右から左へ行進している。》

真武さん
じゃ 次に。

《真武さんが歩いていく。十数人の来場者がいる。壁に色彩豊かなキャンバスが並んでいる。突起があるように見える。》

真武さん
これは熊本県の曲梶 智恵美(まがりかじ ちえみ)さんという方の作品です。
これも絵に描いたものではなくて、実は 見ると
網目とか縄みたいな 紐とか、そういうものが画面に貼ってあって
その上から絵の具で色を付けているんですね。
この網目とか それから編み物のような貼り付けてあるもの
これは実は、ご自分で編んだものなんです。
曲梶さんは絵を描くだけじゃなくて、編み物とか刺繍とかそういうものも大好きで
そういう手芸をやっているうちに それを今度は貼り付けて
それで画面を作ってみよう、という思いつきがあって
それで こんな絵が出来上がりました。
この うず巻きの刺繍、レース編みですね。
レース編みのコースターですとか
それからレースの糸を編んで紐にしたものとか、全部 自分で編んだものですけども
その組み合わせがすごく みんな上向きですごくエネルギッシュな感じがするんですね。
色も すごく派手な色彩で、すごく元気いっぱいの画面が出来上がっています。

《真武さんが移動する。隣の壁に白黒の絵が10点ほど。》

真武さん
こちらは福岡県の秋永 光(あきなが ひかる)さん。
この方はここには鉛筆だけで描いた人の顔が10点 並んでいます。
普段は こういう 人の顔ばかりじゃなくていろんなものを描いています。
虫とか植物とか それから家の中のものとか、そんなものも たくさん描くんですけれども
人の顔だけ鉛筆で描くんですね。
ほかのものを描く時は水彩とか色鉛筆とか いろんなものを使うのに
人の顔だけ鉛筆で黒々と描いてるのが面白くて、今回は人の顔だけ集めてみました
でも人の顔なんですけれども、よく見ると なんか
目とか鼻とか口の中がすごく いろんなもの
まるでバナナとかピーマンとか、そんなもので出来てるんじゃないか みたいな
いろんな部品がそろってるんですね。
時々 顔だけじゃなくて 体も描いてますけども
体のほうも なんかこう 具体的な手とか足とかじゃなくて
虫を描いているみたいな
虫とか家の中にあるものを描いたような、そんな感じでしています。
それが ちょっと離れて見ると
すごく表情豊かな いろんな人の顔になっているのが面白いと思います。
髪の毛なんかも黒く塗りつぶして 海苔(のり)を貼ったみたいな形ですね。
中には自分の好きなタレントさんの似顔絵らしくて
タイトルを見たら、皆さんも知ってるような人の名前が
俳優さんとかテレビに出ている人とか そういう人の名前が付けられています。

《別の壁。カラフルな絵がいくつも展示されている。》

真武さん
最後にDのコーナーなんですけど
テーマは“遠くを見つめる視線”といって
どちらかというと これまでは身の回りのものを描いているものが多かったんですけど
ちょっと空想の世界とか、それから夢の物語とか、そういうものを集めています。
中には別に空想じゃなくて、実際に行った所の風景とか
そういうのもあるんですけれども
それが やっぱり作家さんが見て
自分のイメージの中で作り替えて夢のようになっています。

《黄色のお寺のような建物の絵。中に何人もの人が見える。》

真武さん
これは鹿児島の西之原(にしのはら)さんの絵なんですけど
これパッと見た時に中国のお寺?と思ったんですけども、実は金閣寺なんだそうです。
金閣寺の中に たくさん人がいるんですね。
金閣寺って 普通は池の向こうから見て 人が入れないんですね。
それが金閣寺の扉が開いて 中にたくさん人がいるんです。
こういう 自分が旅行で見たんですけど ちょっと夢のような風景に変えています。

《隣に巨大な魚を御輿として担ぐ「きばらん海(かい)」というおまつりの絵。その隣には、「ウルトラマン」の絵。》

真武さん
山の滝の中の風景も、ただの旅行で行った所なんですけれども
でも中に 江戸時代の人たちが そこでゴザを敷いて
宴会を開いている場面があったりして…。

《真武さんがマイクを受け取る。》

真武さん
実際に見た風景でも こんなふうに作りもののように物語の世界が出来ています。
あと維新の三傑って言われる西郷隆盛さんとかの銅像があるんです。

《真武さんが銅像の描かれた絵を指し示す。》

真武さん
大久保利通と木戸孝允で三傑の銅像なんですけど
銅像じゃなくて 本当に生きてる人間が台に乗っかっているみたいに見えます。
西之原さんは旅行好きでいろんな所に行かれるそうなんですけども
その旅行の思い出を描いているのが全部 夢の物語のようになっているのが
西之原さんの絵の面白さだと思います。

《真武さんがスタッフと確認を取りながら移動する。》

真武さん
こちらは熊本の松本 寛庸(まつもと ひろのぶ)…

《マイクが入っておらず、真武さんがマイクを見る。》

男性
入ってない。

真武さん
寛庸さんの作品です。入ってない?

《スタッフがマイクの確認をする。》

真武さん
さっきもダメだったんですかね? これダメ?

《スタッフがマイクを持って立ち去る。真武さんは知り合いを見つけて手を振る。マイクが戻ってくる。》

真武さん
松本寛庸さんの作品です。
色鉛筆で すごく繊細な色彩で描かれていますけれども
これも すごく小さな小さな手の跡が見えます。

《水色の海に浮かぶ灰色の潜水艦の絵。船体の下のほうは赤色。空に水色の同じ形の雲がいくつも規則正しく並んでいる。》

真武さん
これは潜水艦の3点組みなんですけど
潜水艦を描いたり
こちらの下の3枚は日本地図です。
上の3枚は国盗(くにと)り物語といって
日本の戦国時代のそれぞれの軍隊の旗が描いてあります。
そういうテーマがあっても全体は
小さな小さなモザイクのような形が詰まって出来ているんですね。

《上の段の絵は、旗が模様のようにちりばめられている。下の段は、モザイク柄の玉のようなものが繋がっている。その中にカラフルな日本地図。》

真武さん
日本地図といっても、真ん中に豆のような形があって
その中に日本地図があって周りが すごくいろんな形で繋がっています。
こんなふうに 描きたいものが大きな形の中に はまっているっていう
そんなふうにして松本さんの絵が出来ています。
あちらにあるのは世界地図なんですけども
日本地図と同じように…

《真武さんが移動していく。たくさんの丸が描かれた4つの絵。3つは、黄色が混じったオレンジ色。同じ大きさの丸がたくさんある中に、大きな丸がひとつ。もうひとつの絵は、青い丸がたくさんある中に世界地図が描かれている。》

真武さん
いろんな形が集まって、中は すごく小さなドットという小さな点々で埋め尽くして
それとモザイクのそれが集まった大きな枠の中に世界地図が入っています。
だから世界よりも世界地図を描いても もっともっと
広い宇宙にまで つながっていくようなそんな絵かなぁと思います。
松本さんの描いているものは すごく慈悲に満ちて もう本当に
無限の広がりを持った世界を描くのが松本さんの絵です。
最初の頃は このようにモザイクでいろんな風景を描いていました。

《世界地図の隣にお城のような建物の絵が一枚展示されている。》

《真武さんが移動していき、大きな絵の前へ行く。茶色の真っ直ぐな縦線が7、8本ほど平行に描かれ、それに交わる何本もの真っ直ぐな横線。碁盤の目の通りのように見える。その間に色ペンでカラフルにさまざまなものが描かれている。》

真武さん
こちらは このDコーナーの最後の作品、
全体の最後の作品にもなるんですけど
沖縄の与那覇 俊(よなは しゅん)さんの作品です。
この展覧会の中で一番大きい2メートルくらいになる作品になっています。
2メートルくらいある四角い絵の中に
すごく小さな小さなものがいっぱい詰まっています。
これは たぶん地図だと思ったんですね。
沖縄の通りが いろいろとあって
その通りに並ぶものを好き勝手に入れたのかなと思いましたら
そうではなくて 地図でもなくて
この並んでる枠はそれぞれ描いていくたびに
1つの面が終わったら次へ
その中には 全然 実際の地図とかではなくて
自分のイメージの中の世界をいろいろと描いているんですね。
だから中には空想のものもあったりとか
実際に見たものも びっしり入ってるし
時々 文字もあります。
文字には 街の中で見た看板の文字もありますけれども
中にはジョーク、ダジャレを見つけて
自分で思いついたダジャレを書いたりもしているようです。
最初から大きな紙に描くんですけども
小さい紙を貼り合わせて描き上げるんじゃなくて
最初から大きな紙に
端っこから だんだん だんだん詰めていって
この全体が仕上がるんだそうです。
色も だからマーカーで付けているんですけれども
きれいなモザイクのように詰まっています。

《真武さんがマイクを下ろし、スタッフと話す。》

真武さん
時間はどうですか?

〔真武さんとスタッフの話し声〕

《真武さんがスタッフと話し終え、ギャラリートークの参加者に向き直る。》

真武さん
これで展覧会の作品紹介は終わりますけれども
ぜひ皆さん この展覧会を実際にご覧いただきたいと思います。
展示の仕方も すごく 作品も みんな個性的なんですけれども
それがよく見えるような形で展示していますので
面白い展覧会になっていると思います。
どうぞ ご覧ください。

〔拍手〕

テロップ
日本博、文化庁、令和2年度日本博主催・共催型プロジェクト