坂本三次郎:上[坂本三次郎の制作]/椎原保:下[坂本三次郎になりきって空間を作る]
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- 坂本三次郎+椎原保坂本三次郎 1921-2016/椎原保 1952-
- 坂本は、暮らしていた福祉施設の空き地で、新たな「空間」を作り出す行為を、20年以上行っていた。葉っぱや石、木、コンクリートブロックなど、身近にある材料を拾い集めてきては、枠を形作るかのように並べ、何度も配置を変えながら並べ続けた。 美術家の...
坂本三次郎+椎原保
坂本三次郎 1921-2016/椎原保 1952-
坂本は、暮らしていた福祉施設の空き地で、新たな「空間」を作り出す行為を、20年以上行っていた。葉っぱや石、木、コンクリートブロックなど、身近にある材料を拾い集めてきては、枠を形作るかのように並べ、何度も配置を変えながら並べ続けた。
美術家の椎原もまた、鏡や光など日常の中で関わりの深いものを素材として、それらを配置する。場所や人の感覚、モノがもつ記憶を結びつけるようなインスタレーションを制作してきた。
2020年、「ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭 ちかくのまち」※において、椎原は琵琶湖のほとりに、坂本の行為を着想源とした空間を作り出した。制作にあたり椎原は、坂本の行為を写した写真や、生前、坂本をサポートしていた職員の証言を手掛かりにして、坂本の制作動機を探っていく作業を行った。使う素材は、会場周辺で拾ったものに限る――これは、坂本の思考回路をなぞる中で、椎原が立てた方針である。場所も違えば集まるものも異なることから、椎原は坂本の作品を完全に再現するのではなく、「もし、この場所に坂本さんがいたら……」と想像しながら、坂本になりきって、空間を作っていった。
※「ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭 ちかくのまち」(2020/ボーダレス・アートミュージアムNO-MA他/滋賀)