瑞泉
ボールペン、クレヨン、色鉛筆・紙、510 x 360
- 犬塚 弘1968-
- 画用紙の中央に酒瓶が居座り、周囲に文字や数字が書き込まれている。酒や焼酎の瓶には商標が書かれ、銘柄を示す挿絵や意匠も描かれ、色彩や割付も実物のまま描写されている。周囲の文字は製造元の会社名や住所、価格、製造法、素材となる穀類の種類や度数まで...
画用紙の中央に酒瓶が居座り、周囲に文字や数字が書き込まれている。酒や焼酎の瓶には商標が書かれ、銘柄を示す挿絵や意匠も描かれ、色彩や割付も実物のまま描写されている。周囲の文字は製造元の会社名や住所、価格、製造法、素材となる穀類の種類や度数までを示している。念が入れば売込口上や古酒の由来なども書かれている。こう述べると販売広告かと誤解されそうだ。けれどもクレヨンや色鉛筆の塗り跡は瑞々しく、手書きで縦横無尽に並んだ文字を見ると、宣伝が目的ではなく、むしろただ描く対象として酒瓶が選ばれているのだとわかる。この酒瓶のデザインや銘柄への執拗な関心は何なのか、という謎が作品をいっそう魅力的にしている。
犬塚は幼少期から父親が自宅で開く酒宴で眼にした酒瓶の色や形に魅了されていた。その頃描いた風景画などにも、どこかに酒瓶が潜んでいた。そのうち酒瓶が主役となる。最近では酒蔵巡りもはじめ画題のリサーチに励んでいる。