無題
アクリルボックスの中に鋏で切られた紙
- 藤岡 祐機1993-
- 毛髪よりもっと細かな、形容しがたく微細な線に刻まれた小さな紙片がどのように作られたのか、見てすぐにわかる人は多くはないだろう。藤岡が鋏を手にして瞬く間に紙に切れ目を入れていく行為を目撃し、刻まれた筋が螺旋状に巻き上がったオブジェを見たならば...
藤岡 祐機
1993-
毛髪よりもっと細かな、形容しがたく微細な線に刻まれた小さな紙片がどのように作られたのか、見てすぐにわかる人は多くはないだろう。藤岡が鋏を手にして瞬く間に紙に切れ目を入れていく行為を目撃し、刻まれた筋が螺旋状に巻き上がったオブジェを見たならば、驚き感服するのだ。藤岡が紙を刻み始めたのは6歳の頃からである。2歳から指で紙を千切って遊んでいるのを見た祖母が鋏を渡して以来、紙刻みが始まった。初期はマチスの切り絵に近いもので、切り出される形態は細長いものが多かった。刀のような魚、蝋燭か縦長の瓶かが並んでいるもの、そして櫛形の切れ目が平行に並ぶもの、この辺りから線条の刻みに発展したと思われる。3〜5cm幅ほどの紙片に上辺に10mmに満たない帯を残し無数の刻みを入れていく。すでに何かのかたちではなく、藤岡祐機の作品以外の何物でもない。紙片は印刷物の部分である。巻毛状に刻まれた線は裏面の色彩をちらちらと覗かせて揺らめく動きや光さえ感じさせる。